明治10年、倉敷の名物菓子を模索していた橘香堂の初代吉本代吉は、編み笠の形と稲穂の黄金色から着想を得て和菓子を創り出します。 この新しい菓子が誕生した際、倉敷の先駆者である林孚一翁によって「むらすゞめ」という名前が与えられました。

倉敷の伝統菓子 むらすゞめ

むらすゞめの外皮は、新鮮な卵を使用し、小麦粉、砂糖などを使用した生地を丸く薄く焼き、片面のみで仕上げます。 焼いた面でつぶ餡を包み込んだ和菓子であり、和製クレープのように薄く丸く焼かれています。 内側には厳選された小豆の粒餡が使われ、甘さを抑えて丁寧に炊き上げられています。 この組み合わせによって、むらすゞめは独特の味わいとハーモニーを生み出しています。

むらすずめ~きっこーどーは岡山県人ならみんなしっとるはず

つぶあんの餡子にゃんね

こしあんの藤戸饅頭、つぶあんのむらすゞめ。これが倉敷の誇りよ
なお、調布も忘れずに!

明治初年頃は、一般的に餅菓子として米粉で作られる生菓子が主流でした。 しかし、その時代においてメリケン粉(小麦粉)と卵を使用した菓子である、むらすゞめは、それまでの和菓子とは異なる洋菓子のような感覚をもたらし、当時の菓子職人たちから注目を浴びました。 以来、この菓子は倉敷の代表的な銘菓として親しまれています。

取扱店舗

むらすゞめは、倉敷市や岡山市を中心とした数店舗の和菓子店で販売されています。 しかし、地元倉敷においては橘香堂がその知名度で他の店を圧倒しています。 橘香堂は地元で長年にわたり愛されている和菓子店であり、地域の方々にとってはむらすゞめを求める際の一つの代表的な店舗となっています。

橘香堂のむらすゞめ

橘香堂のむらすゞめは、厳選された素材にこだわり、手作りで製造されています。 新鮮な卵を使用した外皮や、特別にブレンドされた粘り気のない小麦粉、吟味された小豆を使用した中餡など、素材の品質にこだわっています。 また、橘香堂のむらすゞめは茶道の世界でも高く評価されており、各流派の10月のお菓子として指定されているそうです。 その茶趣ある風味や繊細な味わいは、茶道の世界においても愛されており、まさに伝統と格式を持つお菓子として、多くの方々に愛され続けています。

廣榮堂のむらすずめ

廣榮堂では、北海道産の小豆を使用したむらすずめの他にも、抹茶味のバリエーションを提供しています。 さらに、廣榮堂のむらすずめはスーパーマーケットなどで手軽に購入できるパッケージも展開されており、岡山の定番おやつとして多くの人々に愛されています。 ちなみに、今回の写真は廣榮堂のむらすずめを使っています。

岡山の味覚を堪能!手作りむらすずめで倉敷銘菓の魅力を満喫の画像

倉敷の伝統から産まれた菓子

前置きになりますが、倉敷市はい草で有名な地区として知られており、伝統的ない草の産業や文化が根付いていました。 当時の倉敷市は大小の島々が点在する海に囲まれていましたが、江戸時代に入ると干拓が本格化します。 しかし、干拓された農地は塩分を多く含み、稲の栽培には適していませんでした。 そのため、塩分を含む土地でも育つ作物として「綿花」と「イ草」が広く栽培されるのですが、これが後に倉敷市を繊維産業の町へと発展させる礎となりました。

そのひとつである、イ草産業が、むらすゞめにも重要な影響を与えます。 むらすゞめが作られたきっかけは、江戸時代の倉敷の風景や風習に由来しています。 倉敷は備中米の集散地であり、多くの米倉が立ち並んでいたことから、倉屋敷、つまり倉敷という地名が付けられました。

岡山の味覚を堪能!手作りむらすずめで倉敷銘菓の魅力を満喫の画像

倉敷では、米の収穫の豊凶が生活に大きな影響を与えていたため、お盆の時期になると、イ草で編んだ笠をかぶり、豊作を祈願する豊年踊りを行っていたのです。 この時の踊りの様子が稲穂に群がる雀のような動きであったため、その風景や風習から着想を得たことにより、むらすゞめという菓子が生まれたのです。

むらすゞめ 羽振はらいて なよ竹の 雪はかろげに なりにけるかな

この句は、京都の殿上人である源有任が詠んだもので、むらすゞめの美しい姿を描き、雪のように軽やかに舞い上がる雀の様子を表現しています。 むらすゞめの華やかさと優雅さを表現し、その美味しさとともに倉敷の風景や文化を彩っています。

むらすゞめの由来には諸説あり?

むらすゞめの発祥には異説もあります。 一つの説では、岡山の倉敷出身で岡山銘菓「調布」を考案した間野与平が「むらすずめ」も考案したと伝えられています。 調布にはむらすゞめの考案者としての記述が付属されていたようです。 ただし、現在の翁軒ではむらすゞめは販売されておらず、定かではありません。

手作りむらすゞめが作れる、倉敷美観地区点

岡山倉敷美観地区の入り口に位置する橘香堂美観地区店では、橘香堂直営店舗の中で唯一、手で焼くことができるむらすゞめの体験ができます。 自らが焼くからこその一味違った魅力を体験することができるチャンス?! 焼き上がったむらすゞめは、新鮮な卵を使った薄く丸い生地に絶妙な粒餡を乗せて包みます。 シンプルな作業ですが、自分でやってみるとその難しさを実感でるハズ。 出来上がったむらすゞめは自分自身で味わうもよし、家族や恋人と分け合うもよしです。

また、手作り体験では通常のむらすゞめとは異なる「ジャンボむらすゞめ」も作ることができます。 ジャンボむらすゞめには、粒餡に加えて白玉団子も入っており、なんと、通常のむらすゞめの約7倍の大きさ!! かなりのボリューム感があります! ぜひ、倉敷美観地区でこの体験に挑戦してみてください!

橘香堂美観地区店へのアクセス方法

所在地 〒710-0055 岡山県倉敷市阿知2丁目22−13
オープン時間 10:00~16:00
駐車場 下記市営駐車場(有料)がオススメです
市営美観地区東駐車場
市営あちてらす倉敷駐車場
市営美観地区南駐車場
市営駅前駐車場
トイレ あり

山陽自動車道倉敷ICまたは、瀬戸中央自動車道早島ICから車で約20分の距離に位置する倉敷美観地区には、むらすゞめを手焼き体験できるコーナーもあります。

ホットペッパーグルメ Webサービス

\この記事をシェアする/